

「糖尿病と言われているけど、目は特に見えにくくなっていない」——そう感じているうちに、実は網膜の内部では深刻な変化が進んでいることがあります。増殖前糖尿病網膜症は、自覚症状がほぼないまま重症化することがある、非常に注意が必要な段階です。
この段階を早期に発見し、適切な治療を行うことで、視力を守れる可能性が高まります。糖尿病網膜症は病期(ステージ)によって治療方針が大きく異なり、増殖前の段階ではレーザー治療(網膜光凝固術)が有効な選択肢の一つとされています。
この記事では、増殖前糖尿病網膜症の特徴・症状・治療法・受診のタイミングについて、眼科専門医がわかりやすく解説します。
-
- ✅ 増殖前糖尿病網膜症の症状と他のステージとの違い
- ✅ 進行を抑えるための治療法(レーザー治療など)の内容
- ✅ いつ・どのタイミングで眼科を受診すべきか
「症状がないから大丈夫」は危険なサイン?増殖前糖尿病網膜症のリアル
なぜ「自覚症状がない」ことが最大の問題なのか
糖尿病と診断されながら眼科への定期受診を後回しにしている方は少なくありません。「視力が落ちていないし、見えにくいわけでもない」という理由で来院が遅れるケースが多いのですが、増殖前糖尿病網膜症は症状がほとんど出ないまま進行するのが最大の特徴です。
網膜の血管が傷んでいても、初期〜中期の段階では中心の視力(視野の中央で細かいものを見る力)には影響が出にくいため、「見えているから問題ない」という誤解が生じやすいのです。
実際に視力の低下や視野の欠けを自覚したときには、すでに増殖期(より進行した段階)に移行している可能性があります。増殖前の段階で適切な治療や経過観察につなげられるかどうかが、視力温存において非常に重要な分岐点となります。
増殖前糖尿病網膜症で起きていること
糖尿病によって慢性的に血糖が高い状態が続くと、網膜の毛細血管が少しずつダメージを受けます。増殖前の段階になると、血管の閉塞(閉じてしまう)が広範囲に及び、網膜に「虚血(酸素・栄養が届かない領域)」が生じます。
この虚血状態が悪化すると、網膜は酸素を補おうとして新生血管(もろくて出血しやすい異常な血管)を作り始めます。この新生血管が出現した段階が「増殖糖尿病網膜症」であり、硝子体出血や牽引性網膜剥離といった深刻な合併症につながります。
つまり、増殖前糖尿病網膜症とは、新生血管が出現する前段階の一つです。この段階で適切な治療を行うことが、失明リスクを下げるうえで大きな意味を持ちます。
よくある誤解:「眼科より内科の血糖コントロールが先」は本当か
「まず内科で血糖を下げてから眼科に行けばいい」と考える方もいますが、これは誤解です。血糖コントロールは網膜症の進行抑制に欠かせませんが、すでに生じている網膜の病変によっては、眼科での治療が必要になることがあります。内科と眼科、両方を並行して受診することが重要です。

糖尿病網膜症の3つのステージと増殖前の位置づけ
病期の分類を知ることが治療選択の第一歩
糖尿病網膜症は進行度によって大きく3つのステージに分類されます。それぞれの特徴と、増殖前がどの位置にあるかを確認しましょう。
網膜の毛細血管にコブ(毛細血管瘤)ができ始め、小さな出血や白斑が見られます。自覚症状はほぼありません。血糖コントロールと定期的な眼底検査が主な対応となります。
毛細血管の閉塞が広がり、網膜に酸素・栄養が行き届かない「虚血」の領域が増えます。軟性白斑・静脈の拡張や蛇行・網膜内細小血管異常(IRMA)などが眼底検査で確認されます。この段階でレーザー治療を行うかどうかの判断が重要です。自覚症状がないことが多いため、定期検査なしでは見逃されやすい段階です。
新生血管が発生し、硝子体出血や牽引性網膜剥離が起こるリスクが高まります。黄斑(視力の中心)に浮腫が生じる糖尿病黄斑浮腫も視力低下の主要な原因です。抗VEGF薬の硝子体内注射や硝子体手術が必要になる場合があります。
増殖前に発見できるかどうかで予後が変わる
眼科学会のガイドラインでは、増殖前糖尿病網膜症の段階でレーザー光凝固術(網膜光凝固術)を行うことで、増殖期への移行リスクを下げる効果が期待できるとされています
増殖前の段階を定期検査で早期に発見することが、視力を守るうえで非常に重要です。糖尿病と診断されたら、視力の変化がなくても必ず定期的な眼底検査を受けましょう。
⚠️ 注意:血糖コントロールの急激な改善にも注意が必要
血糖値を急激に下げると、一時的に網膜症が悪化する場合があることが知られています。血糖コントロールの変更を行う際は、眼科での定期的なモニタリングをあわせて行うことが望ましいとされています。内科と眼科の連携が大切です。
増殖前糖尿病網膜症の主な治療法
レーザー治療(網膜光凝固術)とはどんな治療か
増殖前糖尿病網膜症の治療において、現時点で広く行われているのが網膜光凝固術(レーザー光凝固術)です。レーザーの光を網膜の虚血領域に照射し、網膜の酸素需要と供給のバランスを改善することで、新生血管の発生を抑制する効果が期待できます。
治療は通常、点眼麻酔を行ったうえでレーザーを照射します。1回の治療にかかる時間は症例によって異なりますが、比較的短時間で行えることが多く、入院は不要な場合がほとんどです。照射範囲や回数は病変の広さや部位によって異なります。
レーザー治療のメリット・デメリット
✅ メリット
- 入院不要で外来(日帰り)で行える場合がほとんど
- 増殖期への移行リスクを下げる効果が期待できる
- 保険診療の対象となる治療(費用の目安は受診時にご確認ください)
- 比較的短時間で施術が完了することが多い
⚠️ 注意点
- 照射後に一時的に視野が狭くなったり光がまぶしく感じる場合がある
- 傷んだ視機能の回復を図る治療ではなく、進行を抑える治療(個人差あり)
- 複数回の施術・通院が必要な場合もある
- 治療後も定期的な眼底検査の継続が必要
抗VEGF薬(硝子体内注射)はどんなときに使われるか
増殖前糖尿病網膜症の段階では、レーザー治療が主な選択肢となることが多いですが、糖尿病黄斑浮腫(網膜の中心部に水が溜まる状態)を合併している場合には、抗VEGF薬の硝子体内注射が行われることがあります。
抗VEGF薬は、新生血管の成長を促すVEGFというたんぱく質の働きを抑えることで、浮腫や新生血管の発生を抑制する効果が期待される薬剤です。レーザー治療と組み合わせることもあります。どの治療法を選択するかは、病変の状態・進行度・患者さんの全身状態などを踏まえて眼科専門医が判断します。
血糖・血圧・脂質のコントロールも並行して
眼科治療と同時に、内科での全身管理も欠かせません。HbA1c(ヘモグロビンA1c)や血圧・血中脂質のコントロールが不十分だと、レーザー治療後でも網膜症が進行する場合があります。眼科と内科の両方で継続的な管理を行うことが、長期的な視力温存につながります。
受診・検査のタイミングと日常生活で気をつけること
糖尿病と診断されたらすぐに眼科へ
糖尿病と診断された時点で、まだ網膜症の症状がなくても、眼科を受診して眼底の状態を確認することが大切です。糖尿病の罹患期間が長いほど、網膜症が発症・進行するリスクが高まることが知られています。特に罹患10年以上の方は、定期的な眼底検査を欠かさず行うことが重要です。
眼底検査では瞳孔を散瞳薬(目の瞳孔を広げる目薬)で広げてから眼底を詳しく観察します。散瞳後は数時間、光がまぶしく感じたり近くが見えにくくなるため、当日の自動車・バイク・自転車の運転はお控えください。
検査の頻度の目安
検査の頻度は病変の進行度によって異なります。一般的な目安は以下のとおりです(個人差があります。担当医の指示に従ってください)。
| 病期 | 眼底検査の頻度の目安 |
|---|---|
| 網膜症なし・単純網膜症(軽度) | 6〜12か月に1回程度 |
| 増殖前糖尿病網膜症 | 1〜3か月に1回程度(担当医の判断による) |
| 増殖糖尿病網膜症・黄斑浮腫 | 1か月以内の頻度が必要なこともある |
※上記はあくまで一般的な目安です。検査間隔は担当医の指示に従ってください。
日常生活で意識したいこと
増殖前糖尿病網膜症と診断された方が日常生活で意識できることをまとめます。いずれも医師の指導のもとで取り組んでください。
- 血糖値の管理:食事・運動・薬物療法で血糖値を安定させる。急激な変動は網膜症悪化のリスクになることがある
- 血圧・脂質の管理:高血圧や脂質異常症は網膜症の進行を加速させることが知られている
- 禁煙:喫煙は血管障害を悪化させる要因の一つとされている
- 定期通院を欠かさない:症状がなくても指定された間隔で必ず眼科を受診する
⚠️ こんな症状が出たらすぐに眼科へ
急に視力が落ちた・視野の一部が欠けてきた・目の前に黒い点や糸くずが増えた(飛蚊症の急激な増加)・視界が赤っぽく見えるなどの症状は、硝子体出血や網膜剥離のサインである可能性があります。このような症状が現れた場合は、できるだけ早く眼科を受診してください。
船橋市・南船橋眼科の糖尿病網膜症診療について
千葉県船橋市にある南船橋眼科では、一般眼科から糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・緑内障などの専門的な診療まで幅広く対応しています。「目の健康をもっと身近に」という理念のもと、赤ちゃんから高齢者まで、どなたでもお気軽にご相談いただける環境を整えています。
- 🏥 院内手術室・レーザー治療機器を完備し、糖尿病網膜症に対するレーザー治療に対応しています。入院治療や、より専門的な検査・治療が必要と判断した場合は、適切な医療機関へ紹介します。
- 👨⚕️ 日本眼科学会専門医が複数在籍し、各領域のスペシャリストがチームで連携して診療にあたります
- 🕐 土日祝日も診療しています月・火・木・金・土:10:00~13:00/15:00~18:00日曜・祝日:10:00~13:00/15:00~17:00休診日:水曜日。平日に来院が難しいワーキング世代の方にもご利用いただきやすい環境です
- 🚉 南船橋駅直結・改札から徒歩1分(ららテラスTOKYO-BAY 2F)。お買い物のついでにご来院いただけます。駐車場(8台)もご利用いただけます

よくあるご質問(FAQ)
まとめ:増殖前糖尿病網膜症で大切なこと
- ✅ 増殖前糖尿病網膜症は自覚症状がほぼなく、定期的な眼底検査でしか発見できない
- ✅ 新生血管が出現する前の段階でレーザー治療を行うことで、進行抑制が期待できる✅ 内科での血糖・血圧管理と眼科での定期受診を並行して行うことが重要
- ✅ 急な視力低下・飛蚊症の急増・視野欠損などの症状はすぐに眼科を受診する
- ✅ 糖尿病と診断されたら、症状がなくても眼科への定期受診を習慣にしましょう
糖尿病網膜症のご相談は南船橋眼科へ
「症状はないけど心配」「眼底検査を受けたことがない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。土日祝日も診療しており、南船橋駅直結でアクセス便利です。WEB予約で待ち時間を短縮できます。




👨⚕️ 院長・佐倉達朗医師より
「増殖前糖尿病網膜症は、自覚症状がほぼないために見逃されやすい段階です。糖尿病の方は、見え方に変化がなくても定期的な眼底検査を受けることをぜひ習慣にしてください。私自身、患者さんに寄り添いながら、一人ひとりの状態に合わせた治療・管理をご提案することを大切にしています。気になることがあればお気軽にご相談ください。」