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白内障手術後の回復期間と経過
白内障手術は現在、年間約140万件も行われている一般的な手術です。手術自体は10分程度で終わる日帰り手術ですが、術後の回復には個人差があります。
手術当日から良く見えるようになる方もいれば、1週間以上かけて徐々に回復していく方もいます。視力の回復は、角膜や網膜の状態など様々な要因によって異なってきます。
術後は傷口が塞がるまでの1ヶ月程度が特に重要な期間となります。この期間は感染症のリスクが高まるため、医師の指示に従った適切なケアが必要です。
手術直後はかなりまぶしく感じることがありますが、これは手術前は濁っていた水晶体を通して見ていたのが、手術で急に濁りがとれて大量の光が入るために起こる自然な反応です。時間の経過とともに、このまぶしさは徐々に和らいでいきます。
また、物が少し青みを帯びて見える「青視症」を感じる方もいます。これは手術前の水晶体が加齢によって黄色味を帯びていたため、青色をはじめとする短波長の光が目に入りにくくなっていたことが原因です。こちらも時間とともに脳が適応し、気にならなくなっていきます。
白内障手術後の日常生活での注意点
白内障手術後の生活では、いくつかの注意点があります。特に術後1週間は感染症のリスクが高い時期ですので、以下の点に気をつけましょう。
まず何より大切なのは、目をこすったり押さえたりしないことです。傷口から細菌が入り込む恐れがあります。
洗顔や洗髪も術後しばらくは控える必要があります。顔の汚れが気になる場合は、目の周りに水がかからないようにして、タオルで目元を避けて拭く程度にしましょう。洗髪は術後3〜7日後から可能になることが多いです。
入浴については、首から下のシャワーや肩までの入浴であれば手術当日あるいは翌日から可能です。
また、手術当日はお酒を控えることをおすすめします。量にもよりますが、手術から1週間程度は控えるのが無難でしょう。
日常生活の制限期間の目安は以下のとおりですが、あくまで一般的な目安です。実際には主治医の指示に従ってください。
- シャワー(首下のみ):翌日から可能
- 入浴(肩までの):翌日から可能
- 洗髪:3〜7日後から可能
- 洗顔:3〜7日後から可能
- アイメイク:1週間後から可能
- 髭剃り:注意しながら可能
白内障手術後の仕事復帰の目安

白内障手術後の仕事復帰については、仕事内容によって大きく異なります。デスクワークのような身体に負担がかからない仕事であれば、翌日から復帰することも可能です。
一方で、力仕事や農業など身体に負担がかかる仕事の場合は、1ヶ月間の安静期間が必要となることもあります。特に重いものを持つような作業は、傷口が開いてしまう可能性があるため注意が必要です。
また、屋外での作業は目にゴミが入ったり、患部に触れてしまったりする可能性があり、感染症のリスクが高まります。仕事内容についてはあらかじめ主治医に相談し、必要な安静期間を職場に伝えておくことが大切です。
術後1週間以内は翌日の検診を含めて何度か診察を受けていただくことが多いので、医師に相談のうえ、安全な状況になってから復帰しましょう。
仕事復帰の目安は以下のとおりです:
- デスクワーク:翌日から可能
- 力仕事:1ヶ月後から可能
- 軽いスポーツ:1週間後から可能
- 激しいスポーツ:1ヶ月後から可能
仕事や家事は、軽作業であれば医師の指示を受けて翌日から無理のない範囲で行うことができます。ただし、埃っぽい場所での作業は避けるようにしましょう。
白内障手術後の運転について
白内障手術後の車の運転については、視力の回復の程度には個人差がありますが、手術直後の運転は原則として禁止されています。
目の保護のために使用する眼帯が取れるタイミングか、医師の許可がおりるまでは車の運転は控えましょう。
運転に関しては休養期間の目安はなく、基準は視力と自覚的な見え方を判断の一つの指標にします。術後の検診にて、視力の様子を見て再開を検討しましょう。
運転再開の判断は必ず医師に相談し、許可を得てから行うことが重要です。視力が回復していても、まぶしさを感じる場合は運転に支障をきたす可能性があります。
安全のためにも、運転再開は焦らず、医師の指示に従いましょう。
白内障手術後の見え方の変化と違和感
白内障手術後は、見え方にいくつかの変化や違和感を感じることがあります。これらのほとんどは時間の経過とともに改善していきますが、知っておくことで安心して回復を待つことができます。
まず、手術直後はまぶしさを感じることが多いです。これは手術前は濁った水晶体を通して見ていたのが、手術で濁りがなくなり、目に入る光の量が急に増えたためです。このまぶしさは徐々に和らいでいきますが、サングラスの使用が役立つこともあります。
また、物が青みを帯びて見える「青視症」を感じることもあります。これは手術前の水晶体が年齢とともに黄色く変色していたため、青色が遮断されていたことによります。手術で透明な眼内レンズに交換されたことで、青色がよく見えるようになったのです。この症状も脳が新しい色覚に慣れるにつれて、徐々に気にならなくなっていきます。
見え方が安定するまでには1〜3ヶ月ほどかかる場合もあります。この間、視力が変動することもありますので、あまり心配せずに経過を見守りましょう。
白内障手術前に使用していた眼鏡は、術後はほとんどの場合で合わなくなります。新しい眼鏡を作るのは、視力が安定する術後1〜2ヶ月後が理想的です。それまでの間に生活に支障がある場合は、医師に相談して一時的な眼鏡を作ることも検討しましょう。
白内障手術後の点眼薬の使用方法

白内障手術後は、感染予防や炎症を抑えるために点眼薬を使用します。医師から処方された点眼薬は、指示された回数と期間、正しく使用することが大切です。
点眼薬の種類としては、抗生物質の点眼薬、炎症を抑えるステロイド点眼薬、非ステロイド性抗炎症点眼薬などが一般的です。これらを適切に使用することで、術後の回復をスムーズに進めることができます。
点眼薬の正しい使い方は以下の通りです:
- 点眼前に手をよく洗う
- 点眼薬の先端が目やまつげに触れないように注意する
- 下まぶたを軽く引き下げて、結膜嚢(まぶたの裏側のくぼみ)に1滴垂らす
- 点眼後は目を閉じて軽く押さえ、薬液が目の中に行き渡るようにする
- 複数の点眼薬を使用する場合は、5分以上間隔をあける
点眼薬の使用期間は通常1〜2ヶ月程度ですが、症状や回復状況に応じて医師が調整します。指示された期間は必ず使用を続け、自己判断で中止しないようにしましょう。
また、点眼薬の保管方法にも注意が必要です。直射日光を避け、清潔に保ち、使用期限を守りましょう。開封後は1ヶ月を目安に使い切るのが望ましいです。
白内障手術後に注意すべき症状
白内障手術は安全性の高い手術ですが、術後に以下のような症状が現れた場合は、すぐに医師に相談しましょう。早期発見・早期治療が重要です。
特に注意が必要な症状としては、強い痛み、急激な視力低下、充血の悪化、目やにの増加、光が見えにくい、視界がかすむなどがあります。これらの症状は感染症や炎症、網膜剥離などの合併症の可能性があります。
また、手術後に見え方に違和感がある場合も、医師に相談することをおすすめします。例えば、物が二重に見える、歪んで見える、視界の一部が欠けて見えるなどの症状は、他の眼疾患の可能性があります。
定期検診は非常に重要です。術後1日目、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後など、医師の指示に従って必ず受診しましょう。定期検診では視力検査や眼圧測定、細隙灯顕微鏡検査などを行い、回復状況を確認します。
白内障手術後の回復は個人差がありますが、適切なケアと注意を心がけることで、多くの方が良好な視力を取り戻しています。不安なことがあれば、遠慮なく医師に相談してください。
まとめ
白内障手術後の回復期間と日常生活の注意点について解説してきました。手術後は感染症のリスクを避けるため、特に1週間は注意が必要です。
日常生活では、洗顔や入浴、運転、仕事復帰など様々な場面で注意が必要ですが、軽作業であれば翌日から、力仕事は1ヶ月後からが目安となります。
見え方の変化や違和感については、まぶしさや青視症など一時的な症状が現れることがありますが、多くの場合は時間とともに改善します。
点眼薬は医師の指示通りに使用し、気になる症状があれば早めに相談することが大切です。定期検診も必ず受けるようにしましょう。
白内障手術は年間140万件も行われている一般的な手術であり、適切なケアを行うことで多くの方が良好な視力を取り戻しています。不安なことがあれば、ぜひ専門医にご相談ください。
より詳しい情報や白内障手術についてのご相談は、南船橋眼科までお気軽にお問い合わせください。経験豊富な眼科専門医が、あなたの目の健康をサポートいたします。
著者情報
南船橋眼科 院長 佐倉達朗

経歴
- 筑波大学医学群医学類 卒業
- 東京都立多摩総合医療センター 臨床研修医
- 東京医科歯科大学医学部附属病院 眼科
- 東京都保健医療公社大久保病院 眼科
- 川口市立医療センター 眼科
- 川口工業総合病院 眼科
- 柏厚生総合病院 眼科
- 南船橋眼科 院長



