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お子さんの視力低下に不安を感じていませんか?
「黒板の文字が見えにくい」「テレビに近づいて見る」「目を細める」・・・こうした仕草が増えてきたら、それは近視進行のサインかもしれません。
小児近視は、単なる「視力が悪くなる」だけの問題ではありません。放置すると、将来的に緑内障や網膜剥離といった深刻な眼疾患のリスクが大幅に高まることが、国内外の研究で明らかになっています。軽度の近視であっても、リスクは約4倍に跳ね上がるのです。
本記事では、眼科専門医として日々小児近視の診療に携わる立場から、近視がどこまで進行するのか、そのメカニズムと将来リスク、そして今日から始められる具体的な進行抑制対策について、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。
小児近視の進行メカニズム・・・なぜ子どもの近視は進むのか
近視とは、眼球の前後径(眼軸長)が伸びることで、遠くのものにピントが合わなくなる状態です。
成長期の子どもは、身長が伸びるのと同じように眼球も成長します。しかし、この成長が過度に進むと、網膜よりも手前で焦点が結ばれてしまい、遠くがぼやけて見えるようになります。これが近視の本態です。

特に小学生から中学生にかけての時期は、眼軸長が急速に伸びやすい時期です。この時期にスマートフォンやタブレットの長時間使用、外遊び不足、不適切な姿勢での読書などが重なると、近視進行が加速します。
近視進行の主な要因
近視進行には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
- 遺伝的要因・・・両親ともに近視の場合、子どもが近視になる確率は約60%に達します
- 環境要因・・・近業作業(スマホ・タブレット・読書)の長時間化
- 屋外活動の減少・・・太陽光を浴びる時間の不足が近視進行と関連
- 姿勢の問題・・・至近距離での作業が眼に過度な負担をかける
- 照明環境・・・暗い場所での読書や画面視聴
特に近年、デジタルデバイスの普及により、子どもたちが近業作業に費やす時間が劇的に増加しています。慶應義塾大学医学部の調査によれば、小中学生の近視有病率は年々増加傾向にあり、特に都市部でその傾向が顕著です。
眼軸長の伸展と近視度数の関係
眼軸長が1mm伸びると、近視度数は約3ジオプトリー(-3.00D)進行すると言われています。
正常な眼軸長は成人で約24mmですが、強度近視の方では26mmを超えることも珍しくありません。わずか数mmの違いが、視力に大きな影響を与えるのです。
問題は、一度伸びた眼軸長は元に戻らないという点です。だからこそ、進行を早期に食い止めることが極めて重要になります。
小児近視はどこまで進むのか・・・進行予測と臨界期
「うちの子の近視は、いったいどこまで進んでしまうのか?」
これは、診察室で保護者の方から最もよく受ける質問の一つです。

年齢別の近視進行パターン
近視の進行速度は、年齢によって大きく異なります。
一般的に、小学校低学年から中学年(6歳~10歳)にかけては、年間で-0.5D~-1.0Dほど進行することが多く、この時期が最も進行が速い時期です。中学生になると進行速度はやや緩やかになり、年間-0.25D~-0.5D程度になります。高校生以降は、多くの場合で進行が緩やかになり、18歳~20歳頃には安定することが一般的です。
ただし、これはあくまで平均的な傾向であり、個人差が非常に大きいことを理解しておく必要があります。
強度近視への移行リスク
小学校低学年で既に-3.0D以上の近視がある場合、将来的に-6.0Dを超える強度近視に進行するリスクが高まります。
強度近視は、単に「度が強い」というだけでなく、眼球構造自体に変化が生じている状態です。網膜が薄く引き伸ばされ、様々な合併症のリスクが飛躍的に高まります。
だからこそ、軽度近視の段階での早期介入が、将来の視力を守る上で決定的に重要なのです。
近視進行がもたらす将来の深刻なリスク
「近視は眼鏡をかければ見えるから大丈夫」・・・そう考えていませんか?
実は、近視、特に強度近視は、将来的に様々な眼疾患のリスク因子となることが、数多くの疫学研究で明らかになっています。

網膜剥離のリスク増加
強度近視の方は、正視(近視がない状態)の方と比較して、網膜剥離のリスクが約10倍高いとされています。
眼軸長が伸びることで網膜が薄く引き伸ばされ、裂孔(穴)ができやすくなります。この裂孔から網膜が剥がれてしまうのが網膜剥離です。突然の視野欠損や飛蚊症の増加などの症状が現れ、緊急手術が必要になることもあります。
緑内障のリスク増加
軽度近視(-3.0D未満)であっても、緑内障のリスクは正視の方の約4倍に上昇します。中等度近視(-3.0D~-6.0D)では約6倍、強度近視(-6.0D以上)では約10倍以上にもなるという報告があります。
緑内障は、視神経が障害され、視野が徐々に狭くなっていく疾患です。初期には自覚症状がほとんどなく、気づいた時には既に進行していることも少なくありません。一度失われた視野は回復しないため、早期発見・早期治療が極めて重要です。
近視性黄斑症のリスク
強度近視では、眼球の伸展に伴い、網膜の中心部である黄斑部に変性が生じることがあります。これを近視性黄斑症と呼びます。
黄斑部は、物を見る上で最も重要な部分です。ここに障害が生じると、視力が大きく低下し、日常生活に深刻な支障をきたします。現在のところ、有効な治療法が限られているため、予防が何より重要です。
白内障の早期発症
強度近視の方は、白内障が通常よりも早期に発症する傾向があります。また、核白内障と呼ばれるタイプの白内障が多く、進行すると近視度数がさらに強くなることもあります。
これらのリスクを考えると、「近視は単なる屈折異常」と軽視することはできません。小児期からの適切な進行抑制対策が、生涯にわたる視機能を守る鍵となるのです。
今すぐ始められる近視進行抑制対策・・・生活習慣の改善
近視進行を抑制するために、まず取り組むべきは生活習慣の改善です。
これは費用もかからず、今日からでも始められる対策です。地道な取り組みですが、その効果は決して小さくありません。
屋外活動時間の確保
国内外の研究で、屋外活動時間の増加が近視進行抑制に有効であることが示されています。
1日2時間以上の屋外活動が推奨されています。太陽光を浴びることで、眼内でドーパミンという神経伝達物質が分泌され、これが眼軸長の伸展を抑制すると考えられています。
屋外での活動内容は問いません。公園で遊ぶ、散歩する、スポーツをするなど、太陽光を浴びる時間を意識的に増やすことが大切です。
近業作業の適切な管理
スマートフォンやタブレット、読書などの近業作業は、30分ごとに5~10分の休憩を取ることが推奨されます。
作業距離は、最低でも30cm以上を保つようにしましょう。特にスマートフォンは、無意識のうちに顔に近づけてしまいがちです。意識的に距離を保つことが重要です。
また、「20-20-20ルール」も有効です。これは、20分ごとに20フィート(約6m)以上離れた場所を20秒間見るという方法です。遠くを見ることで、毛様体筋の緊張を緩和し、眼の疲労を軽減できます。
適切な照明環境の整備
暗い場所での読書や画面視聴は避けましょう。
部屋全体の照明に加えて、デスクライトなどで手元を明るくすることが推奨されます。照度は500~1000ルクス程度が適切とされています。
正しい姿勢の維持
猫背や前かがみの姿勢は、眼と対象物の距離を近づけてしまいます。
椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、机と眼の距離を適切に保つことを心がけましょう。読書やタブレット使用時には、机の上に置いて使用し、寝転がって見ることは避けるべきです。
これらの生活習慣改善は、どれも基本的なことですが、継続することで確実に効果が現れます。ご家族全員で取り組むことで、お子さんも続けやすくなるでしょう。
医学的に有効性が認められた近視進行抑制治療
生活習慣の改善に加えて、医学的に有効性が認められた治療法を併用することで、より高い進行抑制効果が期待できます。

低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ点眼)
世界的に最も広く行われている近視進行抑制治療です。
アトロピンは、もともと小児の斜視や弱視の診断・治療に使用されてきた点眼薬ですが、近視進行を抑制する効果があることが明らかになりました。通常濃度(1%)では副作用が問題となりましたが、20~100倍に希釈した0.01%~0.05%の低濃度点眼では、副作用がほとんどなく、平均で約30~60%の近視進行抑制効果が報告されています。
2024年12月末には、参天製薬の「リジュセアミニ点眼液0.025%」が、近視進行抑制治療薬として日本で初めて厚生労働省の承認を受け、2025年春より販売が開始されました。
使用方法は、1日1回、就寝前に点眼するだけです。非常に手軽で、小さなお子さんでも続けやすい治療法です。
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは、特殊な形状のハードコンタクトレンズを就寝時に装用し、角膜の形状を一時的に変化させることで、日中は裸眼で過ごせるようにする治療法です。
近視矯正効果だけでなく、装用開始から2年間で通常の眼鏡やコンタクトレンズと比較して、平均30~60%の眼軸長伸展抑制効果が報告されています。10年を超える有効性と安全性の報告もあり、比較的信頼性の高い治療法と言えます。
日中は裸眼で過ごせるため、スポーツをするお子さんに特に適しています。また、夜間に保護者の管理のもとで装用できるため、年齢の低いお子さんでも安心して使用できます。
ただし、ハードコンタクトレンズの装用に抵抗がある場合や、適切な管理を怠ると角膜感染症などの重篤な合併症を起こすリスクがあるため、必ずガイドラインを遵守し、定期的な眼科受診が必要です。
南船橋眼科での小児近視治療・・・専門医による個別対応
南船橋眼科では、小児近視治療に特に力を入れています。
南船橋駅から徒歩1分、ららテラスTOKYO-BAY内という通いやすい立地で、土日祝日も診療を行っており、お忙しいご家族でも通院しやすい環境を整えています。

個々のお子さんに最適な治療法の提案
近視進行抑制治療には、複数の選択肢があります。それぞれに特徴があり、お子さんの年齢、近視の程度、生活スタイル、ご家族の希望などを総合的に考慮して、最適な治療法を提案させていただきます。
当院では、オルソケラトロジーとリジュセアミニ点眼(低濃度アトロピン)の両方を提供しています。
オルソケラトロジーは、日中は裸眼で過ごせるため、スポーツをするお子さんに特に適しています。夜間に専用のコンタクトレンズを装用することで角膜の形状を変化させ、近視を矯正するとともに、近視進行の抑制効果も期待できます。
リジュセアミニ点眼は、1日1回の点眼で平均約44%の進行抑制効果が報告されており、副作用が少なく、小学生から中学生まで幅広く適応できます。特に軽度の近視の段階で開始することで、将来的な視力低下リスクを軽減できます。
定期的なモニタリングと治療効果の評価
近視進行抑制治療を開始した後は、定期的な受診により、治療効果を適切に評価していきます。
視力検査、屈折検査、眼軸長測定などを行い、近視の進行状況を客観的にモニタリングします。治療効果が不十分な場合は、治療法の変更や追加を検討します。
生活習慣指導も含めた総合的なアプローチ
治療だけでなく、生活習慣の改善も非常に重要です。
屋外活動時間の確保、近業作業の適切な管理、正しい姿勢、適切な照明環境など、日常生活で気をつけるべきポイントについても、丁寧にアドバイスさせていただきます。
お子さんとご家族が一緒に取り組めるよう、わかりやすく具体的な指導を心がけています。
学校検診後の受診もお気軽に
学校検診で視力低下を指摘された場合、早めの受診をお勧めします。
視力が0.7以下になっている、急激に視力が低下している、家族に強度近視の方がいる、といった場合は、特に早期の対策が重要です。
近視は一度進行すると元に戻すことが難しいため、「早期発見・早期対策」が何より大切です。少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
まとめ・・・小児期からの近視進行抑制が生涯の視力を守る
小児近視は、放置すると将来的に深刻な眼疾患のリスクを高めます。
軽度近視であっても、緑内障のリスクは約4倍に上昇し、強度近視では網膜剥離のリスクが約10倍にもなります。一度進行した近視は元に戻らないため、小児期からの適切な進行抑制対策が、生涯にわたる視機能を守る鍵となります。
今日から始められる生活習慣の改善として、1日2時間以上の屋外活動、30分ごとの休憩を取り入れた近業作業の管理、適切な照明環境と正しい姿勢の維持が重要です。
さらに、医学的に有効性が認められた治療法として、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、近視管理用眼鏡、多焦点ソフトコンタクトレンズなどがあります。これらは平均30~6%の近視進行抑制効果が報告されており、お子さんの状況に応じて最適な治療法を選択することが可能です。
南船橋眼科では、南船橋駅徒歩1分という通いやすい立地で、土日祝日も診療を行っています。小児近視治療に力を入れており、オルソケラトロジーとリジュセアミニ点眼の両方を提供し、個々のお子さんに最適な治療法を提案させていただきます。
お子さんの視力低下が気になる方、学校検診で指摘された方は、ぜひ早めにご相談ください。WEB予約にも対応しており、待ち時間を短縮できます。
お子さんの未来の視力を守るために、今できることから始めましょう。
南船橋眼科は、船橋市・南船橋・谷津・習志野エリアの皆様の「目のかかりつけ医」として、お子さんの大切な目の健康を全力でサポートいたします。
著者情報
南船橋眼科 院長 佐倉達朗

経歴
- 筑波大学医学群医学類 卒業
- 東京都立多摩総合医療センター 臨床研修医
- 東京医科歯科大学医学部附属病院 眼科
- 東京都保健医療公社大久保病院 眼科
- 川口市立医療センター 眼科
- 川口工業総合病院 眼科
- 柏厚生総合病院 眼科
- 南船橋眼科 院長



